今の3年生が1年生だった頃。
クラスの生徒たちのあまりの成績の悪さに「もしかして勉強方法が悪いのかも…?」と思い、藁にもすがる気持ちで読んだのがこの一冊です。
この本を読み、はじめて私は脳科学的な側面から勉強法を考えました。
当時の私は、この本に書かれていることにあまりに共感し感動してしまったため、自分なりに要約し、生徒たちに紹介したのですが、その改編版をここに掲載しておこうと思います。
勉強方法に悩んでいる人は、ぜひこの本を読んでみてください!!
- 1.復習することで海馬はダマされる
- 2.小さなグループに分けると覚えやすい
- 3.感動すると覚えやすい(情動喚起)
- 4.脳への「入力」よりも「出力」を重視する
- 5.暗記モノは寝る前にやる
- 6.勉強するならお腹が空いた時
- 7.ブドウ糖は脳の栄養素として必須
- 8.まずは得意な科目をやる(特恵効果)
- 9.まずはとにかく机につく(作業興奮)
- 10.勉強もテストも、最初と最後が一番集中している
私たちの脳の中で記憶をつかさどっているのは、『海馬』というとても小さな構造体です。
この海馬。
いろいろなことがらを記憶してくれるわけですが、実は、何でも記憶してくれるというわけではありません。
海馬がもっとも記憶するもの…それは「生存するために必要な情報」です。
学校で学習する「○○年にシュメール人が…」といったことがらは、一見すると生存に必要だとは思えません。
それよりも海馬は、「どこでえさが取れるか」といったことがらの方を優先して覚えようと、情報を取捨選択するのです。
1.復習することで海馬はダマされる
つまり、海馬には一見重要だとは思えない情報を、「重要だ」とダマして覚えさせることが必要なのです。
その海馬をダマす方法こそが、ずばり「復習」です。
復習というのは何度も同じ情報が脳に入ってくるということなので、海馬は「こんなに何度も入ってくる情報は重要な情報に違いない」と勘違いするのです。
また、エビングハウスの忘却曲線というものがありますが、復習すればするほど、忘れる早さも遅くなります。
2.小さなグループに分けると覚えやすい
海馬にも、覚える容量には限界があります。
電話番号は、「050-184-1713」というように、3つのかたまりに分けて表記されますが、実はこれも脳科学的にとても重要なことなのです。
この表記が「0501841713」だと途端に覚えにくいように感じないでしょうか?
脳は小分けにされた情報の方が入りやすいのです。
このことから、英単語も同じような意味でグループ分けしたり、世界史も国ごとにグループ分けしたりすることでさらに覚えやすくなってきます。
3.感動すると覚えやすい(情動喚起)
これは、感動しているときに、脳の中でシータ波という脳波が放出され、それが海馬の働きを促進するためだと言われています。
私も高校時代、生物だけは常に「面白い!」と感動しながら勉強していたため、あまり「覚えられない…」と苦労した覚えはありません。
(世界史などは、以下に紹介するやり方で覚えるようにしていました。)
勉強するときは、常に「面白い!」と感動するようにしましょう!
その科目の「面白さ」に気付くことが、勉強の第一歩です。
4.脳への「入力」よりも「出力」を重視する
脳には「入力」と「出力」があります。
単語を叩き込んで覚えるという行為は「入力」に相当します。
一方、蓄えた知識をもとにテストを解いてみるという行為は「出力」に相当します。
記憶するには、出力(テスト)を何回もやるのが最も効率的です。
特に英単語を覚える時は、一人復習テストをして、必ず紙に英単語を書き出していくのがおすすめです。
また、覚えたい情報を人に説明するというのも出力のいいやり方です。
ラーニングピラミッドというものがありますが、他の人に教えるという経験は学習の定着率を格段にアップさせます。
他の人に教えるためには、いったん覚えた知識を説明するために知識を伝えやすく整理する必要がありますし、自分が必死に相手に説明している時の状況などが知識と絡み合って記憶されることで、知識を思い出すきっかけが増えることになります。
私は、世界史や現代社会などの暗記モノは、人に説明するつもりでまとめ、実際に友だちと話しながら覚えていました。
この「声に出して話しながらする」というのが実は重要で、耳から入ってきた情報は記憶されやすいのです。
哺乳類は目よりも耳を発達させている動物です。
これは、その昔、哺乳類が夜行性だったため、目よりも聴覚を優先的に発達させてきたからです。
手、目、耳などの五感を最大限に活用して(歩き回るのもよい)、海馬をフルに刺激しながら記憶するのが、勉強の近道です。
5.暗記モノは寝る前にやる
これはよく言われることですが、寝る前は記憶のゴールデンタイムです。
脳は、睡眠中に情報をさまざまな形で組み合わせ、整合性をテストし、過去の記憶を整理してゆきます。
どの情報が必要で、どの情報が必要でないかを海馬がチェックしているのだと考えられます。
蓄えた知識を整理整頓して「使える」状態に変えることが、睡眠のひとつの役割であり、知識の量が変わるのではなく、知識の質が変わるのです。
寝ることは覚えたことをしっかりと保つための大切な行為なので、徹夜はやめるようにしましょう。
6.勉強するならお腹が空いた時
海馬は生存に必要な情報を覚えると前に書きましたが、生存の危機にある時ほど生物の記憶力は高まります。
生存の危機にある時。
それは、「空腹」の時です。
お腹がからっぽになると、グレリンというホルモンが胃から放出されます。
このグレリンが血流にのって海馬に届き、その働きを活性化してくれるのです。
家に帰ってからの夕食前は、疲れてダラダラしてしまいがちですが、この空腹の時ほど海馬が働きやすく、勉強に最適な時間なのです。
こうやって脳科学的に効率のよい時間を選んで、自分なりの勉強スケジュールをつくり上げましょう。
7.ブドウ糖は脳の栄養素として必須
ブドウ糖(グルコース)を補給すると、脳の働きが活発になります。
脳は体の中でもっとも大切な組織に位置付けられているようで、毒などが侵入しないように頑丈に守られています。
タンパク質や脂肪でさえ、うまく脳に入り込めません。
すこしでも危険性のある物質は、脳には侵入できません。
つまり、脳が安全だと選んだ栄養素がブドウ糖なのです。
8.まずは得意な科目をやる(特恵効果)
得意な科目を十分に理解することができると、脳はそれを応用できるようになります。
例えば、「光合成」を理解してしまえば、それを応用して「呼吸」もなんとなくすんなりと理解できるようになります。
また、得意科目を先にやることで、ペースが掴め、脳のウォーミングアップを図ることもできます。
私は、得意科目というか、生物と国語が好きだったので、この2つからなんとなく勉強をするようにしていました。
また、数学や社会などを勉強して、休憩をとる暇のない時(かなり追い込まれている時)には、「息抜き科目」として好きな生物と国語を合間にはさむようにしていました。
9.まずはとにかく机につく(作業興奮)
脳科学者のビネーは、知能を上げる三大要素として「論理力(数学)、言語力(国語)、熱意」をあげています。
この「熱意」つまりは「ヤル気」ですが、このヤル気は脳の『側坐核』というところから発信されます。
言うなれば、側坐核は脳のヤル気スイッチなのです。
しかし、このヤル気スイッチは作動するまでに10分ほど時間がかかります。
ヤル気が出なくても、まずは机について10分間勉強してみましょう。
そうすると、徐々に側坐核が目覚めて、集中して勉強できるようになってきます。
10.勉強もテストも、最初と最後が一番集中している
これは、「初頭努力」と「終末努力」と呼ばれますが、初めと終わりが特に集中力が高くなると言われています。
テスト開始直後は問題を解くことに集中し、テスト終了直前は見直しの時間にあてましょう。
…と、ここまで色々と書いてきましたが、勉強の基本は、
「覚えられる範囲で覚える。」
「理解できた範囲を確実にモノにする。」
「努力を継続させる。」
の3つだと思います。
「努力を継続させる」ことはとても難しいことですが、私は勉強を「面白い」と思い、夢(目標)を持ってさえいれば、なんとかなるものだと思っています。
そもそも「勉強を面白いと思えない」という人も多いですよね。
確かに、テスト自体は決して楽しいものではありませんが、テストのことを考えなければ、どんな教科でもなにかしら興味をひかれる部分があるものです。
学問の面白さ、楽しさに気付いた時、そこから世界は一気に広がります。
「物は試し」と言いますが、外から眺めているだけでは、面白さがわからないということがらはたくさんあります。
やってみて、聴いてみて、初めてわかる面白さがあるのです。
しかも、その道を究めれば究めるほど、その面白さがわかるようになってきます。
人の良いところを見つけることが円滑な人間関係につながるように、その教科の面白さを頑張って見つけ、その教科と末永く付き合っていけるようになりましょう。
夢や目標が定まりつつある高校時代。
自分の目標に向かって、人生で一度真剣に、がむしゃらに勉強してみましょう。
『夢をもち続けていれば、いつか必ずそれを実現するときが来る。』 ゲーテ
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。たくさん書いてしまいましたが、まずは私自身、生物の面白さに気づいてもらえる先生になることを目標に頑張ります!